上田会計週報『成り行き管理』2015.07.06
2015年07月06日
“成り行き管理”とは、管理者が業務推進の場面に応じた有効な管理の視点や方法を持っていないか、目標管理制度のような管理手段を持っていても、有効に機能していないために生じる現象で、業務の推進を担当者任せにしており、その結果、業務の無駄が放置されたり、部門間のタイアップ業務がうまく進まず、関係部署・関係者に迷惑をかけるなどの不具合が生じて、企業全体の体力低下につながります。
“成り行き管理”の背景・原因
このような望ましくない管理が起こる背景・原因は、管理者に「先が見えない仕事だから、計画を立てても始まらない」とする意識があるためで、そのような部署では、次のような現象が見られます。
① 業務の優先度が明示されず、時期ごとに集中すべき業務が定まっていない。
② 業務のゴールとプロセスが明確にされないまま、スタートを切っている。
さらに、その根本にある原因を探ると、
③ 管理者が担当部署の問題・課題を認識していないため、戦略目標が不明確で、挑戦すべき事柄が不明確である。
④ したがって、所属社員の挑戦意欲も低い。
このような部署が放置される程、企業全体の事業推進力は低下し、実力を持った人材も育たないことになります。
経営者・管理者の留意点
“成り行き管理”を根絶することは、経営者・管理者が年度ごとの経済環境の変化を踏まえ、健全な緊張感を持続して、経営戦略とその実現を図る目標管理制度の運用に注力することと同義であり、以下のような対策が必要となります。
① 経営者の事業意欲を経営戦略目標として設定し、現状とのギャップを明示する。
② 各部署の戦略目標達成のために果たす役割・期待貢献と、その成果に応じた人事賃金制度上の処遇を明確化する。
③ 事業推進上不確実であっても重視すべきリスクと対応策を検討、目標設定する。
(例えば、商品クレーム対策は、不確実であるが、一度起これば製品回収など経営に大きな損失を与えるため、その予防策を品質管理上の信頼性目標として設定するなど)
④ 経営者が主導し、管理者に目標管理制度運用において生じている“成り行き管理現象”に注目させ、排除を図る。