上田会計週報『学資金非課税体系の変更 と年季明け課税の廃止』2016.09.12
2016年09月12日
みんな非課税所得扱いだった
扶養義務者相互間の扶養義務履行給付としての学資金、及び給与性のない給付学資金は非課税でした。そして、従来通達では、従業員に支払う小中学、高校までの学資金は給与性なしとみなして非課税とし、高専、大学、大学院、専門学校などは給与性ありで課税とされていました。また、業務遂行上直接必要技術・知識・免許・資格取得学資金もその仲間で非課税としていました。
非課税学資金と業務遂行必要費用の分別
今年の税制改正で、学資金非課税の制度体系が変わりました。法律の明文で示されているのではありませんが、当局の解釈としての通達をみると、業務遂行必要学資金は非課税項目から外れています。
ただし、従来どおり、業務遂行必要学資金については、その費用支払先に制限がなく、対象者を特定役員・特定従業員とする制限付きのものであったとしても、適正性を要件に、個人への経済的利益供与について、「課税しなくて差し支えない」とされています。
非課税学資金の範囲の拡大
他方、非課税学資金の方は、業務遂行上の直接必要性の外側のものということが明確になり、さらに、従業員への給付学資金は、小中高学資金だけでなく高専、大学、大学院、専門学校などの学資金まで、制限なく、且つ給与性の有無を問わずに、非課税と扱われることになりました。
ただし、①役員、経営者親族等の特定従業員に限定して支給するもの、②従業員家族を対象とするもの、はそれぞれ、公私混同排除、給与性ありの線引基準で、非課税から除かれます。
年季奉公明け課税の縮小から廃止へ
改定の想定ケースは、返済義務の有る奨学金を得て、大学、大学院、専門学校などで学び、医師や弁護士などの資格を取得した後、奨学金拠出法人などで一定期間使用人としてお礼奉公をし、年季奉公明けになると、奨学金の返済義務が免除される、という場合の、義務免除という経済的利益を非課税とする、というようなものです。
従来も、看護師の受ける奨励金30万円を一時所得として給与課税の外側とするものや医師免許取得後の貸与学資金の返還免除の要件が、学資金提供関連団体への直接勤務としないので、非課税とするものがあり、課税縮小が進行し、複雑化ししていたので、非課税枠拡大で整理したといえそうです。