上田会計週報『管理会計の古典を読む 『事業部制の業績評価』』2017.03.27
2017年03月27日
古典から現代の課題を探る
管理会計(特にマネジメント・コントロール関連)の古典の一つであり、初版は1965年の出版で、1983年に復刻版が上梓されたのが、David Solomons (1983):Divisional Performance: Measurement and Control: Markus Wiener Pub. 桜井通晴・鳥居宏史(監訳)『事業部制の業績評価』(東洋経済新報社 2005年)です。
監訳者はしがきで、「現在のビジネスの世界で最も大きな話題をさらっている管理会計の本質にかかわる多くの問題を実によく記述しており、しかもその内容の多くは、現代においても全くその輝きを失っていない」と記されています。また、本書は、「バランスト・スコアカードの起源ではないにしても少なくともその基盤にはなっていると考えている。」と記されています。
なぜ事業部制を採用するのか
利益責任を持たせるため、「意思決定の分権化」が事業部制です。企業全体の収益性を高める上で、事業部が果たす貢献を長期的に最大化させることを目的とします。将来の幹部育成のトレーニングにもなります。
事業部制組織誕生の背景
第一次大戦後、アメリカでは事業運営においての多角化が進み、伝統的な職能別組織ではそれに十分対応することができなくなったため、その問題点を克服するために生まれたとされています。
事業部制の成功のための前提条件
利益の所在を明確にするために、各事業部が他の事業部からの独立性をきちんと確保することが必要です。本社は口出しし過ぎないことも大事です。
ただし、全社として最適であるためには、ある程度の相互依存も必要です。調達や製造、販売、人事、経理等の機能は全社レベルで共有するなどし、全体最適を目指します。
事業部制のデメリット
経営資源の重複の無駄や、事業部間をまたぐ新たな取り組みが難しいなどの弊害があります。
事業部制が常に正しい答えとは限らない
会社の規模等により必要性が異なるため、事業部制が全ての状況においてあらゆる規模の組織をもつ企業に適しているというわけではありません。自社に最適な組織については会計事務所にも相談しましょう。