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上田会計週報『ジョン・ドゥ・サモンズ』2018.12.25

2018年12月25日

ジョン・ドゥ・サモンズ(John Doe Summons

米国には、刑事訴追を前提とするものではないのに、裁判所の召喚状に基づいて行う強制調査(サモンズsummons)があります。

サモンズでは、その対象となる納税義務を負う納税者を特定するのが通常なのですが、特殊な場合には、納税者を特定するためのサモンズを発することが認められています。

それが、匿名召喚状(John Doe Summonsで、第三者に対し、不特定の納税者に関する情報の提出を求める仕組みです。

UBS・HSBCへのサモンズ

サモンズは、スイスUBS銀行やHSBC(香港上海銀行)に対して発せられた匿名召喚状(John Doe Summons)に象徴されるように国内外を問わずに発せられます。

このUBS、HSBC向けは、世界的に話題になりましたが、対象が幅広く、タックスヘイブンの守秘義務を売りにしていたこれらの銀行商売に風穴を開けました。

情報の3倍の自主申告

後日談ですが、UBS銀行を使って、資産隠しをしていた人に対して、米国税務当局は、自主的に申し出た場合は罰則等を軽減すると期限を切って布告しました。その結果、15,000人余りが自主申告をしたそうです。米当局の得た情報は4,450件でしたので、その3倍以上の脱税的資産フライトがあったわけです。

しかし、UBSは情報の一部しか開示しなかったのは明らかで、実態は3倍どころではなかったのかもしれません。

国際版ではサモンズからFATCAへ

なお、米国は2013年から、米国外のすべての金融機関に、米国人の口座情報を米当局に届け出るように求める外国口座税務コンプライアンス法(FATCA)を施行しています。情報提供を拒むなら、米国の制裁を避けてドル決済をしなければならず、ドル建て取引が当たり前の国際環境の中では、それは事実上不可能に近いことです。そのため、世界のプライベートバンクの多くは米国人顧客を忌避しています。

日本の場合、個人情報保護法の手前、口座名義人の同意なく米当局に情報開示ができないので、日本政府向けに個人情報を開示して、米当局には日米の租税条約に基づき政府が情報提供する仕組みにしました。UBS事件の時、スイスの銀行と政府の採った手法です。

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