訪問看護の複数名訪問加算など、同一建物の考え方導入へ
2019年12月02日
中央社会保険医療協議会(中医協、会長=田辺国昭・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は11 月20 日に総会を開き、訪問看護の提供体制について議論した。この日は以下の3 点がテーマとなった。
▼機能強化型訪問看護ステーション
▼同一建物居住者に対する訪問看護
▼理学療法士等による訪問看護
厚生労働省は、機能強化型訪問看護ステーションの現状について、理学療法士等職員の割合が4 割以上のステーションが約1 割あり、さらに理学療法士等職員の割合や理学療法士などによる訪問回数の割合が8 割以上のステーションも存在すると報告。理学療法士等職員の割合が40%以上の機能強化型訪問看護ステーションは、40%未満のステーションに比べて、職員1人あたりの重症者受入れ数やターミナルケア実施数が少ないとする調査結果も示した。
これらを踏まえ厚労省は、機能強化型訪問看護管理療養費について、以下の3 点を論点として示した。
▼より手厚い看護提供体制を評価する観点から、機能強化型訪問看護管理療養費の要件に、看護職員の割合を加えてはどうか
▼医療従事者の働き方の観点から、一部の職員については常勤換算によって満たせることにしてはどうか
▼医療機関における在宅患者訪問看護・指導について、実績要件を加味した評価のあり方をどのように考えるか
松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は「理学療法士割合の多いステーションは機能強化型訪問看護管理療養費の成果が不十分だ。論点に示された通りに、機能強化型訪問看護管理療養費の要件に看護職員の割合を加えることや点数の設定を検討すべきだ」と主張、さらに「医療機関における在宅患者訪問看護・指導について、機能強化型訪問看護管理療養費と同様の実績要件を加味した評価にすべきだ」と述べた。
実績要件を加味することについては、幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)も賛同した。幸野委員は、医師による指示の強化にも触れ「訪問看護を適正化するには、医師が、誰が訪問するのか、どのぐらいの頻度で訪問するかを指示することが必要だが、現状ではいずれも訪問看護ステーションに委ねられていることが一番の問題だ。医師が訪問者と訪問頻度を規定して指示書に記載すべきだ」と主張した。
幸野委員の意見に対して、今村聡委員(日本医師会副会長)は「医師は訪問看護ステーションの中身をきちんと把握すべきだ」と一定の理解を示しながらも、現場の実態について「ステーションの体制や患者の状態で訪問頻度を変更する場合、医師との連携がスムーズにいかないこともあるうえ、訪問頻度を変えれば患者の費用負担も変わる。全体の状況を踏まえて、医師はおおよその指示はしていると理解している」と説明した。
看護の立場から吉川久美子専門委員(日本看護協会常任理事)は「看護師は医師との連携のもとに患者の状態を判断して、状態に合わせて訪問していることを理解してほしい」と述べたが、松本委員は「医師が指示を出すことが原則だ」と釘を刺した。
一方、猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は「訪問看護ステーションにはリハビリ主体の事業所が多いが、看護に必要なリハビリと考えて、整合性を図るべきだ。ただ、医療資源の少ない地域での訪問看護ステーションのあり方は、他との連携に時間がかかるので十分に配慮してほしい」と要請。吉川委員も「隣接する市町村の医療機関との連携などを見直してほしい」と述べた。
さらに、一部の職員の常勤換算について「在宅看護で働く看護師を増やす一つの方策につながると思う。訪問看護ステーションの質を担保するうえでも検討してほしい」と訴えた。
■複数名訪問加算など、同一建物居住者の考え方導入を
同一建物居住者に対する訪問看護について厚労省は、「複数名訪問看護加算と難病等複数回訪問加算についても、同一建物居住者に係る考え方を導入することとしてはどうか」を論点として示した。
松本委員は「現行の診療報酬体系と整合性を図る意味では、複数名訪問看護加算と難病等複数回訪問加算についても、同一建物居住者に対する考え方を検討してもよいのではないか」と賛意を示した。一方、吉森俊和委員(全国健康保険協会理事)は、「同一建物居住者への複数名訪問看護加算で、准看護師との訪問と看護補助者との訪問の算定が急激に増えている。この実態が妥当なのかを検討してもよいのではないか」と訴えた。
■理学療法士等による訪問看護をどう考えるか
理学療法士等の訪問看護について厚労省は、以下の2 項目を論点として示した。
▼理学療法士による訪問看護と看護職員による訪問看護の提供内容の違いを加味して、理学療法士による週4 日目以降の訪問看護の評価のあり方をどのように考えるか
▼訪問看護計画書及び報告書に、訪問する職種を記載することとしてはどうか
松本委員は「理学療法士が週4 日目以降に訪問する場合は、医師が訪問看護指示書にその必要性を記載することを検討したらどうか」と提言した。一方、幸野委員も現状を問題視し、「4日以降の訪問の評価では、看護師、保健師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がひとくくりにされていることが問題を生じさせている。医療的措置を行うのは看護師と保健師なので、職種別の点数設定を検討すべきだ」と訴えた。
チーム医療の立場からは半田一登専門委員(チーム医療推進協議会代表)は「訪問看護の患者には神経系の疾患を持った人が多く、片麻痺など疾患によっては理学療法士によるリハビリが週3 日以上になってしまう場合があるので、協力してほしい」と理解を求めた。