ミネルバ会計週報『複式簿記3つの発明』2021.06.28
2021年06月28日
「複式簿記は人類最大の発明」
と、ゲーテが言ったか言わなかったかは、定かではありませんが、非常によくできた財産の管理システムであることは確かです。
① 第1の発明は「貸借均衡の原則」による財産の管理です。
車を買ったような場合、車という財産は増えますが、購入することによって現預金は減少します。また借金をしたような場合、現預金は増えますが、借入金という負の財産も増えます。複式簿記では以下のように表示します。
(車両) 1,000 /(現預金)1,000
(現預金)5,000 /(借入金)5,000
② 第2の発明は「名目勘定」です。
①では、財産の管理ですから、実在する財産(負の財産も含む)科目しかありません。しかし商売を始めるとそれでは貸借の均衡が保てない場合が生じます。
600で購入した商品を1,000で売ったような場合です。減少する財産は商品600ですが、増加する財産は現預金1,000となり貸借均衡が崩れます。そこで発明されたのが費用や収益といった名目勘定です。複式簿記では以下のように表示します。
(現預金)1,000 /(商品) 600
/(商品販売益)400
また飲み食いで散財したような場合、現預金は減少しますがそれに見合った財産は増えません。複式簿記では以下となります。
(交際費)300 /(現預金)300
③ 第3の発明は「資本勘定」です。
航海貿易が始まると今度は1回の航海でどれだけ儲かったかを知りたくなり、一会計期間という概念が出てきます。会計期間を区切ると、実在する財産科目は次の会計期間に繰越しますが、費用や収益といった名目勘定は実在しませんから、次の会計期間では0スタートとなり、そこで貸借均衡が崩れることとなります。上記②の例でいうと以下となります。
(現預金)1,000 /(商品) 600
/(現預金)300
は翌期へ繰り越しますが、
(交際費)300と(商品販売益)400
は次の会計期間では0スタートとなります。
そこで発明されたのが資本です。商品販売益と交際費の差額は繰越利益剰余金(資本)100として翌期に繰り越されます。これで貸借均衡が保てます。