上田会計週報『改定人事賃金制度への移行』2014.08.11
2014年08月11日
近年、人事賃金制度を年功主義から成果貢献、発揮能力に基づく実力主義へ転換する企業が増えていますが、改定制度の適用は、賃金の減額を余儀なくされる社員がでるケースが多く、全社員に改定趣旨を浸透させながら注意深く現行制度からの移行を実施しなければなりません。
改定制度への移行の仕方
改定制度で新たに等級定義を決め、それに対応する賃金レンジを設定、全社員の実力を評価して新制度を適用した結果、例えば「社員の15%が昇級して賃金が上がり、同様に15%が降級して賃金が減額になる」といったケースがよく発生します。
昇級し賃金が上がる社員は、モラールが向上し問題はありませんが、降級し賃金が下がる社員については、該当社員のモラール低下と、他の社員の不安感をできるだけ抑える配慮が必要となります。
最近の具体例で改定制度への移行ステップを紹介しますと、K社では次の通り、慎重に取組んでいます。
【改定制度への移行ステップ(例)】
改定制度導入1年前(4月) | 全社員を対象として改定制度の趣旨・制度内容説明会 |
6カ月前(10月) | 改定制度による仮等級格付け、仮賃金修正を通知 |
10月~3月 |
・仮等級格付けの見極め ・改定評価制度の先行導入 |
3カ月前(1月) |
従来等級から昇級または降級した社員について変更再審査 |
4月 | 改定制度本格導入 |
5~7年間 | 賃金ダウンとなった社員に、差額分を「制度移行調整手当」として支給(5~7年かけて消却) |
経営者・人事責任者の留意点
人事賃金制度を実力主義へ転換することを決断し、実行に移した以上は、目標管理制度・評価制度の運用を通じて、その趣旨を全社員に徹底し、業績向上に結び付けなければなりません。一方で、改定制度で賃金の減額修正となった社員への一定の配慮(例示した「制度移行調整手当」適用など)を行い、その間には再昇級のチャンスもあることを示し、トータルモラールの維持・向上に配慮して、全員参加の経営を実践するバランス感覚も大切にしたいものです。